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暇十朗#140字小説

@himajuro

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物語を書いてみたい(元)書店員。布団と音楽が大好き。フォローなどしてくださると大層喜びます。 毎日1、2本投稿。140字ぴったりのツイートは全て創作であり、私の掲げる思想などではありません。

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@himajuro
暇十朗#140字小説
4 months
ギャンブルが趣味の彼氏に「これまで一番大勝ちした勝負ってなんなの?」と聞いてみたところ、なぜかちょっとだけ恥ずかしそうに「一昨年のクリスマス」と返された。ああ、なるほど。昔の私ならわからなかっただろうが、今はピンとくる。 「有馬記念ってやつだ」 「競馬場で告白した覚えはないよ……」
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@himajuro
暇十朗#140字小説
4 months
「学生時代のアダ名?デネブだったけど」 夫の口から飛び出した単語が予想外で、思わず茶を吹き出す。で、デネブ?名前に掠ってもいないじゃん。 「窓際の席でいつも寝たふりをしてたんだけど、同じことをしてたやつが前列と廊下側にもいてさ」 夫が空に三角を描く。 「俺がデネブ。アルタイル、ベガ」
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@himajuro
暇十朗#140字小説
3 months
「たまに『おもしれー女』みたいな表現を見るけどさ。いくら相手が超絶イケメンでも、おもしれーとか言われたら嫌じゃない?女の子ってああいうの本当に嬉しいのかね」 「わからん。でも『つまらない男……』って超絶美人の年上お姉さんに言われたら俺はとてもとても嬉しい」 「それはめっちゃ嬉しい」
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@himajuro
暇十朗#140字小説
4 months
「私は無駄が嫌いでね」 「はい」 「浪費癖のある無能は不要。君たちスタッフに求めているのは下品な華美ではなく、突き詰めた機能美だ」 「はい」 「会話とて同じこと。無駄なく有意義な時間にしたい。わかるね?」 「はい」 「よろしい。端的に、結論のみを」 「田中課長が爆散しました」 「過程を」
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暇十朗#140字小説
4 months
「さっきタンスの角に小指をぶつけちゃったんだけどさ」 「痛そう」 「タンス側の代理人から連絡きて」 「ほう」 「要するに『被害者ぶるな』と。『微動だにしていないタンスにぶつかってきたのはお前だろう』と」 「正論ではある」 「10対0で過失はこちらにあるらしい」 「相手は止まってたからなあ」
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暇十朗#140字小説
4 months
「今の若い子たちはゲーム実況なんて見て面白いのか?お父さんは好きだけども」寝耳に水すぎてむせた。聞き間違いだよな。「親父、ゲーム実況が好きなの?」「は?昔から見てるだろ」親父は不思議そうな顔でテレビのチャンネルを変えた。『──先手、7六歩。堅実な立ち上がりです』将棋中継が映った。
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@himajuro
暇十朗#140字小説
1 month
「オデ、オマエ、キニイッタ。タスケル!」怪物はにっこり笑うと、俺に大きな手を差し出してくる。荒事ならすぐにでも頼りたいけど、残念ながら今回は人間関係の問題。その気持ちだけで充分さ。「オデ、ベンゴシ。ミンジ、トクイ。バッジ、ミルカ?」早急にご相談したいんですが、印鑑とか必要ですか?
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@himajuro
暇十朗#140字小説
5 months
「あなた、彼じゃないでしょ。ドッペルゲンガーってやつ?」私の指摘に、彼と同じ姿をしたナニカはぐにゃりと笑った。「恋人ってのは恐ろしいね。家族でさえ気づけない俺の入れ替わりを、まさか見抜くとは。容姿に差異はないはずだが」 「本物の彼は山奥に埋めたもの」 「本物の彼は山奥に埋めたの?」
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@himajuro
暇十朗#140字小説
2 years
「いろんなイケメンに主人公が惚れられる、女性用のゲームってあるだろ?」乙女ゲーのことか。「うん。で、いろんな美少女に主人公が惚れられる、男性用のゲームもあるじゃん」ギャルゲーな。「そう。そのキャラたちで合コンする、スマブラみたいなゲームを作ろうと思う」なんでそんな酷いことするの。
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@himajuro
暇十朗#140字小説
7 days
『私はロボットではありません』の欄にチェックをつけるアンドロイドを見て「嘘つくなよ」とからかったら、「嘘はいいですね。人の作ったものの中で私の次に便利です」なんてしれっと返されたのが先週のこと。今は遊園地のチケット売場で「嘘じゃないのに!四歳なのに!」と製造年数を泣き喚いている。
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@himajuro
暇十朗#140字小説
26 days
「幽霊とか怖くないんで。いたらぶん殴ってやりますよ」酔った後輩がそんなことを言い出すので、近隣の心霊トンネルに放置してきた。大回りし、出口で待つこと数十分。中からすごい勢いで走ってくる後輩。よく見れば片頬が腫れている。「カウンター食らいました。なんか格闘技かじってますよ、あいつ」
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暇十朗#140字小説
3 years
親父が家族に隠れてなにをしていたのか、それを知ったのは葬儀も済んだ頃だった。泣き崩れる母、あまりの衝撃で固まる妹。代理人を名乗る男は、沈痛な面持ちで俺に語りかける。 「息子に継いでほしいと、遺言書にはそう書かれています」 無茶だ。正気の沙汰ではない。 「俺に魔法少女をやれと……?」
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暇十朗#140字小説
2 months
「いろんなイケメンに主人公が惚れられる、女性用のゲームってあるだろ?」乙女ゲーのことか。「うん。で、いろんな美少女に主人公が惚れられる、男性用のゲームもあるじゃん」ギャルゲーな。「そう。そのキャラたちで合コンする、スマブラみたいなゲームを作ろうと思う」なんでそんな酷いことするの。
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暇十朗#140字小説
19 days
愛が重い彼女に「あなたを監禁させて。面倒は見るから」と拉致されたときは驚いたが、地下室も住めば都というか、ネットは通じるし働かなくていいしでノンストレスだ。だが被害者が楽しい監禁は監禁なのだろうか。その辺りを踏まえて彼女と協議した結果、家事全般とご近所付き合いは俺の仕事になった。
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暇十朗#140字小説
1 year
「たまに『おもしれー女』みたいな表現を見るけどさ。いくら相手が超絶イケメンだとしても、おもしれーとか言われたら嫌じゃない?女の子ってああいうの本当に嬉しいのかね」 「わからん。でも『つまらない男……』って超絶美人の年上お姉さんに言われたら俺はすげえ嬉しい」 「それはめっちゃ嬉しい」
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暇十朗#140字小説
5 months
『開けて。お母さんだよ。開けて』 お堂の外から聞こえる声に俺は震える。確かに声こそ母さんだが、これは隠れた俺を誘い出そうとする化物の罠だ。絶対に開けない。返事もしない。 『え!米津がアイドルをカバー!?』 声を出したくなる揺さぶりはやめろ。 『……無敵の笑顔で──』 能力を活かすな。
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暇十朗#140字小説
5 months
「え、元ヤンなんすか」ジムでの世間話中、驚いた俺に先輩が頷く。「敵対してたチームの総長をぶん殴りたくて、ボクシング始めたんだがよ」先輩は照れたように笑った。「これが楽しくてなぁ。リング以外じゃ、殴りたくなくなっちまった」人に歴史あり、か。良い話だ。「仕方ねえからバイクで轢いたよ」
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@himajuro
暇十朗#140字小説
4 months
鬼悪高校の監督が檄を飛ばす。「いいか貴様ら。スポーツマンシップなぞクソ食らえだ。相手の嫌がることをする、それこそが勝負における鉄則!」「ウス!」「では相手が最も嫌がることとはなんだ!言ってみろ!」「俺たちみたいな不良に純粋な実力で負けることです!」「そうだ!正々堂々ぶちのめせ!」
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暇十朗#140字小説
2 months
『屋敷に泥棒が入った』と女中から連絡を受けた。仕事を切り上げ帰ると、蒐集していた骨董品が何点かなくなっている。「犯人は目が利く人間のようで、高価なものばかり盗っていると警察の方が」なるほど、選別したのか。そうかそうか。「あの、旦那様……?」不謹慎にも頬が緩む。自作の掛け軸がない。
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暇十朗#140字小説
2 months
なんと妻の前職が魔女だった。「もう200年ぐらい前の話よ。薬局に客を取られたから廃業したの」なんてしれっと言う。そういえば彼女と結婚してから体調不良になったことが一度もない。まさか僕にもなにか薬を盛っているのか?と訊ねると、「180年も生きてる自分を疑問に思わなかった?」と呆れられた。
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暇十朗#140字小説
2 years
私の家は呪術師の家系だ。本当に効果のある呪いだっていくつも知っている。私は嫌いな男子の顔写真を手に入れると、藁人形に添えて五寸釘を打ち付けた。翌日、明らかに標的の顔色が悪い。友人たちに相談を始めたので、聞き耳を立てる。「なんか胸が痛え」ざまあみろ。「これが恋か」おい待て落ち着け。
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@himajuro
暇十朗#140字小説
1 month
あろうことか愛娘に彼氏ができたらしい。既に会ったという妻に詰め寄るが、「素敵な方よ」とめんどくさそうに返される。「糸目で関西弁の好青年だったわ。社交的で物腰も柔らかかったし」いや絶対に裏切る輩だろ。騙されるんじゃない。「みんなからカビゴンと呼ばれてるって」頼れる男なのはわかった。
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暇十朗#140字小説
4 months
探偵さんの推理が難しくてよくわからないので、隣のお兄さんに「意味わかる?」と聞いたら「黙ってろ」と怒られた。仕方なく窓の外をぼーっと眺めていると、探偵さんが「犯人はあなただ!」と急に叫ぶからびっくり。しかもお兄さんを指差していてさらにびっくり。犯人は俺なのに。──あ、ちょうちょ。
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暇十朗#140字小説
3 months
やめろと言っているのに、麓の村はまだ我に生贄の生娘を捧げてくる。そういう時代じゃないからと何度断っても。やってきた娘たちも「村八分にされてしまうから帰れない」と泣き出す始末。仕方ないので金を包んで上京させているのだが、村の爺婆から『過疎化解決』を祈られたときはさすがに耳を疑った。
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暇十朗#140字小説
1 month
「無能なお前の代わりなんていくらでもいるんだ!──見ろ!」 部長が手を叩くと、背後の扉から俺と同じ姿の集団が入ってくる。 「お前の細胞から造られたクローン部隊だ!お前はもう用済みなんだよ!」 「無能を増やしちゃう辺り、部長もかなり無能だと思います」 そうだそうだとクローン部隊が頷く。
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暇十朗#140字小説
1 month
風呂から出ると、眉間に皺を寄せた妻がこちらを向いた。机に置かれた俺のスマホを見て全てを察する。 「あなた、また課金したよね」 やっぱりか……。 「引かなきゃいけないガチャだったから」 「いいえ。お金の無駄です」 叱られている間、画面では引いたばかりのキャラが笑っていた。妻と同じ声で。
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暇十朗#140字小説
4 months
村では何年も何年も手酷い迫害を受け続け、やっと逃げ出せたかと思えば山賊に捕まる。俺の人生はいったいなんだったのだろう。檻の中で自身の運命を嘆いていると、山賊の頭領が野太い声で脅してくる。「妙な気は起こすなよ。少しでも怪しい動きをしたら、お前の故郷を火の海にしてやるぞ」踊りますね。
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9 months
「オデ、オマエ、キニイッタ。タスケル!」怪物はにっこり笑うと、俺に大きな手を差し出してくる。荒事ならすぐにでも頼りたいが、残念ながら今回は人間関係の問題。その気持ちだけで嬉しいよ。「オデ、ベンゴシ。ミンジ、トクイ。バッジ、ミルカ?」早急にご相談したいんですが、印鑑とか必要ですか?
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暇十朗#140字小説
6 months
「いやあ、死ぬかと思った」 先ほど銃撃された先輩が起き上がったので、俺は絶句する。なぜ生きてる。 「愛の力さ」 先輩が服を捲ると、胸元の白い機械が弾丸を防いでいた。なんすかそれ。 「彼女に埋め込まれた発信器だね」 ……すげぇスマホ鳴ってますけど。 「僕の位置情報が途絶えたからだろうね」
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@himajuro
暇十朗#140字小説
2 years
「これ全部万引き対策ですか?」俺の質問に、店長は鼻息荒く頷く。「もう許さん。盗めるものなら盗んでみろ」明日から監視カメラは三倍、万引きGメンは客より多く配備し、暇さえあれば店長が巡回するらしい。こりゃ確かに鉄壁だ。「じゃ、鍵よろしくな」上機嫌な店長は帰ったので、俺は金庫を開けた。
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暇十朗#140字小説
9 months
『私はロボットではありません』の欄にチェックをつけるアンドロイドを見て「嘘つくなよ」とからかったら、「嘘はいいですね。人の作ったものの中で私の次に便利です」なんてしれっと返されたのが先週のこと。今は遊園地のチケット売場で「嘘じゃないのに!四歳なのに!」と製造年数を泣き喚いている。
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@himajuro
暇十朗#140字小説
16 days
「口を開けば死にたい死にたいって嘆いてたくせに、いざ安逝薬が開発されても一向に使わないじゃん」 不老不死の知人をからかうと、彼はバツが悪そうに「終活が終わらん」とだけ返す。 「終活ぅ?十年もかかる終活ってなんだよ。ピラミッドでも作ってんの?」 「積ん読の消化」 「からかってごめんな」
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暇十朗#140字小説
8 months
勇者の剣を抜ける人間は結局いなかったらしい。我ら魔王軍が占拠した街のど真ん中、瓦礫に紛れて刺さったまま���鉄屑はなんとも間抜けだ。いっそへし折れないかなと柄を掴むと「ん?」抜けた。するっと抜けた。すぐに刺し直し、そっと周囲を窺う。先ほどまで上機嫌だった魔王様がこちらを凝視している。
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暇十朗#140字小説
5 months
昼休み、二段の弁当箱を開けると両方とも白米がつまっていた。どうやら母さんがやらかしたらしい。弟は今頃、俺とは逆におかずのみの弁当を広げていることだろう。途方に暮れているとスマホが鳴った。弟からだ。『兄貴の弁当にご飯ないでしょ?俺の方にご飯が二つ来てるんだけど』ミスじゃない可能性。
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@himajuro
暇十朗#140字小説
1 month
彼氏のPCをこっそり調べたら、えげつない量のアダルト動画が入っていた。多少は覚悟していたものの、さすがにこの数は想定外だ。風呂から戻ってきた彼に黙って画面を見せると、すぐに察した様子。 「たぶん勘違いしてるな。大丈夫だよ」 勘違いもなにもないでしょ。 「俺はね、ちゃんと全部買ってる」
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暇十朗#140字小説
2 months
「ちょっと詩を作ったんだけどもさ。俺の傑作を聞いてみたくはない?」 「勇気の化身かお前は」 「タイトルは『雨ニハマケヌ』」 「賢治に謝れ」 「雨ニハマケヌ」 「始めちゃった」 「風ニハ2勝3敗」 「微妙に負け越してるんだ」 「雪ト夏ノ暑サ態度デカクナイ?」 「勝てないからって陰口を叩くな」
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暇十朗#140字小説
7 months
「祖母の遺品の市松人形なんですが、夜な夜な髪が伸びるんです。今は納屋に隔離していて……」依頼者の説明が事実なら確かにそれは呪いの人形だ。ただ髪が伸びる程度なら実害はないし、平和的な除霊になりそうだな。軽い気持ちで納屋の扉を開けると、中は人形の髪でギッチギチだった。納屋ごと焼いた。
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@himajuro
暇十朗#140字小説
2 years
『お前が糖尿になったら、目の前でホールケーキ食ってやるよ』小太りの友人をそうからかってから一年。まさか俺が先に糖尿病になるとは。「びっくりしたよ。まあ、俺も結局なったんだけど」友人は朗らかに笑うが、言い返す気力もない。「それはともかく」目の前に小綺麗な箱が置かれた。「約束だから」
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@himajuro
暇十朗#140字小説
7 months
最近『【押すと1万円貰えるが、一番嫌いな人間には10万円が入るボタン】があったら押すか?』という話題を知った。興味本位で友人たちに聞いたところ、なんと全員が押す派。ひねくれ者の田中ですら「押すよ」と即答してきた。つい「なんで?」と深掘りしてしまう。 「その理屈だと俺は11万円貰えるし」
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暇十朗#140字小説
2 months
親が元太なんて名前をつけたせいで、ずっとコナン絡みの弄りをされてきた。改名したいぐらいだ。「わかる」共感してくれたのは先輩の安室さん。ただ、俺としては少し納得いかない。「安室ならいいじゃないですか。名字だし、イケメンの人気キャラだし、そもそも先輩は女性だし」「名前が奈美恵でも?」
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2 years
「最近の若い子に多いんだよ。『牙を突き立てるのは人間が可哀想』って嫌がるタイプの吸血鬼」繊細だよねえと彼女は笑う。こちらでいうヴィーガンみたいなものだろうか。そういった穏健派が増えるのは、人としてはありがたいものだが。「だから献血バスとか襲うんだってさ」過激の極みじゃないですか。
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@himajuro
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11 days
とある剣豪に「なんでもありでの立ち合いが望みだ」と決闘を申し込んだら、軍人さんみたいな格好で剣豪が現れた。いや、もはや剣豪とは呼べまい。刀ではなく銃で武装している。「卑怯とは言うまいな」卑怯とは言わないが誇りはないのかとは思う。とはいえ、やつが私の仕掛けた地雷を踏むまであと数歩。
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@himajuro
暇十朗#140字小説
3 months
「あ、密室殺人でもなんでもないな。ここ開くわ」探偵が平然と隠し扉を発見したので、私は絶句する。なにそれ知らないんだけど。「じゃあ窓枠の傷は無関係ってことですか」「どうだろう。犯人はこの仕掛けを知らないという可能性……はないよなぁ」「ないですよ。こんなの誰でも気づきますし」やめて。
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@himajuro
暇十朗#140字小説
2 months
「物語の中盤でDNA鑑定をするんだけど、そこで初めて主人公と妹に血の繋がりがないとわかるの!」 「へー。義理の妹だったってことね」 オススメの漫画について力説する友人。ラブコメだとありがちだよな、義妹設定。 「いや、実は主人公のDNA配列が人間ではありえないっていう」 「あ、ホラーなの?」
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@himajuro
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5 months
AIに国政を任せるシミュレーションをしてみたところ、なぜかやたらと生類憐みの令を復活させようとしてくる。『これは民衆の意思です』とAIは自信満々だが、その根拠はなんだ。気になって調べると、映画レビューサイトの「人は殺してもいいが犬猫は殺すな」という感想を過学習していたことがわかった。
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1 month
かぐや姫から貰った不死の薬。あれを燃やしたというのは真っ赤な嘘だ。とある荒唐無稽な考えが頭をよぎり、最後の最後で取り止めたのだ。当時の自分を思い返していると、扉の向こうが騒がしくなる。 「御門さん!JAXAからお電話です!」 私はゆっくりと目蓋を上げる。 ここまできたぞ。 今からいくぞ。
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@himajuro
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5 months
異世界転生したらケンタウロスだった。最初は下半身を見て泣いたが、馴染めばそう悪くない。ある一つの悩みを除いて。 走るときの腕のポジション、どこ。 振るのか、組むのか。でも人体と違って腕を振ってもあまり意味はないし、組んで走るとシュールだ。俺たちはファッション感覚で弓矢を持っている。
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@himajuro
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2 years
『消える魔球』を武器に、先の甲子園では完全試合を量産した天才ピッチャー。日本中が沸く中、本人は「凄いのは僕じゃなくてキャッチャーの田中です」と謙虚な姿勢。「確かに田中くんも優秀だけど、君の魔球があってこその偉業では?」 「あいつの『現れる捕球』がないと、ボールが消えたままなんで」
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5 months
砂浜でいじめられていた亀を助けたところ、お礼がしたいので海底に来ませんかと誘われた。これは竜宮城コースかなと期待したのだが、「あなたが私の立場ならお礼で皇居を案内するんですか?」と亀にドン引きされたので違うらしい。結局は竜宮城下町の居酒屋で酒と飯を奢ってもらった。いい休日だった。
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20 days
「家庭の事情でね。こういうのは効かないんだ」さも『気づいていましたよ』なんて顔で毒入りスープをもう一口飲む男に、俺は絶句してしまう。毒が効かないだと?どんな訓練をすれば、そんな……。「食べたことないだろ?洗剤で洗った米とか、じゃがいもの芽のサラダとか。俺も結婚するまではなかった」
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@himajuro
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3 months
「ロシアンルーレットは知ってるな?弾は一発、確率は六分の一だが、それじゃつまらない。だから俺が先に四回撃とう」 男は事も無げにそう言うと、自身のこめかみに向かって引き金を引く。カチッ、カチッ、パァン!、カチッと音が鳴った。 「さあ、お前の番だ」 ルールの確認をしてもいいでしょうか。
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@himajuro
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5 months
親友の忘れ形見であり、私が一人で育ててきた女の子が結婚した。式では彼女が涙目で手紙を読む。「今日だけはお母さんと呼ばせてください……っ」感動的な場���だが、普段もお母さんと呼んでるよね。ノリがいいのは本物の母親似だし、泣き真似が上手いのは私に似たなぁ。嘘泣きをしながらしみじみ思う。
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1 year
やめろと言っているのに、麓の村はまだ我に生贄の生娘を捧げてくる。そういう時代じゃないからと何度断っても。やってきた娘たちも「村八分にされるから帰ることはできない」と泣き出す始末。仕方ないので金を包んで上京させているが、村の爺婆から『過疎化解決』を祈られたときはさすがに耳を疑った。
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2 years
「知人の女王様のところで、しばらく豚として室内飼いされてたんだけどさ。時が経つにつれて優しくなっちゃって。ついには『夜、なにが食べたい?』なんて聞かれたから、堪えきれずに逃げ出したよ。女王様は豚野郎に意見など求めない」 「……そうなんだ。大変だったね」 「そう。その目が欲しかった」
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暇十朗#140字小説
2 months
「田中?やめた方がいいよあいつは。ろくでもない男だからね」 「えー?お洒落だしロマンチストで格好いいじゃない。気になるわ」 「ないない。だって世界を花で満たしたいとか真面目な顔で言うんだよ?」 「え、素敵!私も花は大好きなの!」 「どこを歩いても花を踏めるからって」 「唾棄すべき悪」
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11 months
なんと妻の前職が魔女だった。「もう200年ぐらい前の話よ。薬局に客を取られたから廃業したの」なんてしれっと言う。そういえば彼女と結婚してから体調不良になったことが一度もない。まさか僕にもなにか薬を盛っているのか?と訊ねると、「180年も生きてる自分を疑問に思わなかった?」と呆れられた。
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4 months
「実はな、お前の父親は龍なんだ」 育ての親からそう告げられ、俺は自分の両手をしげしげと見てしまう。確かにやたらと腕力が強かったり、傷の治りが早いとは思っていたが、まさか人ならざる血が流れていたなんて。容姿は普通の人と変わらないのに。 「母親は牛だ」 俺は両手と育ての親を交互に見る。
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暇十朗#140字小説
5 months
なんと夫は幼い頃に神様と遊んだことがあるという。「神社でかくれんぼをしたんだよ。着物で狐のお面をつけた子供でさ。あれは絶対に神様だね」……私だ。親の趣味でコスプレをさせられていた当時の私だ。「嘘つけ。俺と君が幼少期に出会ってたとかどんな確率だ」神様とのかくれんぼよりは高いと思う。
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暇十朗#140字小説
3 months
趣味で作曲をしているのだが、友人から「俺のテーマソングを作ってくれよ。ゲームの主題歌みたいなやつ」と頼まれた。で、お安いご用と勇ましいものを作ってあげたのが数年前。そんな友人からついさっき電話がきた。「あのテーマソングを荘厳で熱い感じにアレンジできる?」人生のラスボス戦が近いの?
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暇十朗#140字小説
1 month
「お前にわかるか?軍に身体を改造された俺の気持ちが!この怒りが!!」 かつての仲間は血走った目で俺に銃口を向ける。兵器と化した右腕の銃口を。 「夜は眠れねえ!飯も満足に食えねえ!『コードネームをロックマンに変更したい』という希望も拒否された!」 ちょっと楽しもうとはしてたんじゃん。
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9 months
かぐや姫から貰った不死の薬。あれを燃やしたというのは真っ赤な嘘だ。とある荒唐無稽な考えが頭をよぎり、最後の最後で取り止めたのだ。当時の自分を思い返していると、扉の向こうが騒がしくなる。 「御門さん!JAXAからお電話です!」 私はゆっくりと目蓋を上げる。 ここまできたぞ。 今からいくぞ。
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暇十朗#140字小説
2 years
帰宅するとなぜか彼女はしたり顔。どうやらベッドの下に置いていたエロ本を見つけたらしい。「別に怒らないけどさ。定番がすぎるというか、もっと上手く隠す努力をしなよ」からかうように言われ、少しホッとする。別に本は隠していないんだ。その更に下、床板を剥がすと出てくる死体は隠しているけど。
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@himajuro
暇十朗#140字小説
2 months
勇気を振り絞り『月が綺麗ですね』と呟く。数秒の沈黙の後、鼻で笑われた。 「月は太陽の光を反射してるだけ」 そう返す彼女は目も合わせてくれない。 「……ええと、つまり?」 「や、だからさぁ」 耳を赤くして、そっぽを向いたまま。 「月が綺麗なんだとしたら、そばに太陽がいてくれるからでしょ」
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暇十朗#140字小説
4 months
大金持ちになったものの、正直やることがない。物欲も薄い。だからなんとなく、家の地下に『漫画とかで奴隷がグルグル回す棒のやつ』を作った。回すと地下室の電球が点く。これがまさかの大ウケで、遊びに来るとみんな大喜びで回している。「やっぱ大金持ちの家ってこういうのあるんだな」ないと思う。
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@himajuro
暇十朗#140字小説
5 months
「あなたと私たちは血が繋がってないの」 両親は大事な話があると切り出したが、そのことにはとっくに気がついていた。俺だけツノ生えてるし。最近は火も吹けるし。 「俺の本当の親ってなに?龍とか?」 「いや普通に人間。亡くなった友人夫婦から託された。『なんで龍っぽく育つのか』が今日の議題」
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暇十朗#140字小説
2 years
「これが21世紀の日本か!」感嘆の声をあげた彼らは、なんと数百年後の日本からタイムスリップしてきた未来人らしい。「なぜこの時代に?江戸時代とかの方が面白そうだけど」私の疑問に一人の青年が答える。「観光ではなく勉強旅行なので。日本史の教科書だと、21世紀のページは全部黒塗りなんですよ」
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@himajuro
暇十朗#140字小説
2 months
「この高さから落ちたのでは助かるまい」 私が帰ろうとすると、部下が「待ってください!」と手を上げる。「念のため、死体を確認した方がいいのでは?」神経質なやつだ。ではお前が探してこいと蹴落とす。数秒後、崖下から「なにをするんですか!」と絶叫が響いた。確かに生存の可能性もあるらしい。
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暇十朗#140字小説
2 months
容疑者の一人に事件発生日のアリバイを訊ねたところ、男は唐突に笑い始めた。「いやいや、刑事さん。私があの人を殺すのは不可能ですよ。なぜならその日、私はとある孤島の洋館で別の殺人事件に巻き込まれていましたからね。死ぬ思いで帰ってきたらまた容疑者ですか。もういっそ私を殺してくれよ……」
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暇十朗#140字小説
4 months
知人のお嬢様が「スマホ?持っていませんわよ」なんて言うので驚いた。「連絡も情報も爺やで事足りますもの」あー、なるほど。箱入り娘ってやつだ。「爺やは本当に優秀でしてよ。爺やがいなければ、私は地球が平面であることも月面着陸が嘘だということも知りませんでした」爺やのスマホも取り上げろ。
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暇十朗#140字小説
2 months
友人の声が昨日までと全然違う。元からカッコいい声ではあったが、今日はやや低めの声に変化している。「なんか神様からお告げがきてさ。俺役の声優さんが不祥事を起こしたから、急遽変更したって」と苦笑する友人。神様云々が真実ならば、こいつはこの世界において重要な人物である可能性が高いのか。
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暇十朗#140字小説
2 years
霊感がある友人と心霊スポットに来た。「なんか見えるか?」声に反応して友人はこちらを向く。が、どうもその視線は俺より手前を見ている。まさか俺とお前の間に霊がいるのか。「いるというか──あ、すいません──ライブ会場みてえな──ちょっと通して!──感じだわ」近づくのにかき分けるレベル?
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暇十朗#140字小説
5 months
うちの隣に住む少年が、最近はなぜか私を避けるようになった。昔はよく遊んであげたのに。「歪んだな。可哀想に」なにかを察した友人が憐れみの目で呟く。「どういうことなの?」「お前が高校からイメチェンしたせいだよ」まるで意味がわからない。「『初恋のお姉さんが実はお兄さんだった』はキツい」
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暇十朗#140字小説
5 months
『戦闘中に自分で能力を明かす人、全員バカです』という動画が流行って以来、能力者同士の戦いは基本的に無言が主流となった。これで仕事が大変になってしまったのが医者である。今日も病院には「勝つには勝ったんですけど、なにをされたのかわからないのが不気味で……」という患者が多く押し寄せる。
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暇十朗#140字小説
2 months
『有名な心霊スポットに100人のマッチョを投入し、カラオケ大会を行ってみた』という企画を撮った。まさか15時間以上もかかるとは思わなかったが。編集作業が終わらない。 「……ん?」 都合8回目の『お願いマッスル』を聴いた辺りで違和感に気づく。どういうことだ。何度数えても力こぶが202個ある。
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暇十朗#140字小説
2 months
妻の手料理はやたらと旨い。惚気ではなく、プロとして店を出せるレベルだ。以前に秘訣を聞いたら「隠し味に愛情をたくさん入れてるからね」なんてさらりと返された。あのときは私の方が照れてしまったので深掘りしなかったが、たったいま戸棚の奥に『愛情』とのラベルが貼られた粉末を大量に発見した。
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暇十朗#140字小説
1 year
「私は無駄が嫌いでね」 「はい」 「浪費癖のある無能は不要。君たちスタッフに求めているのは下品な華美ではなく、突き詰めた機能美だ」 「はい」 「会話とて同じこと。無駄なく有意義な時間にしたい。わかるね?」 「はい」 「よろしい。端的に、結論のみを」 「田中課長が爆散しました」 「過程を」
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暇十朗#140字小説
5 months
娘が懐かしいビデオを見つけてきた。私が学園祭でバンドを組んだときのものだ。そうそう、壇上から告白なんてしちゃって。若かったなあ。「ね、もしかして告白した相手がパパ?」目を輝かせた娘が聞いてくる。「ううん。結局この人にはフラれちゃってね。後ろで泣きながらドラムを叩いているのがパパ」
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暇十朗#140字小説
5 months
『巨大牛丼を30分以内に完食したら賞金10万円。失敗したら罰金5万円。※成功者は二回目以降の参加を禁ず』何人もの猛者が挑み破れたうちのチャレンジメニュー。「店長、ギブです」微量の米を残し俺を呼ぶ小僧。冷や汗が止まらない。「で、もう一回やります」こいつ、タダで二杯食うためにわざと……!
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暇十朗#140字小説
5 months
「我が国の軍はあの不死身の男に乗っ取られてしまいました……」将校の言葉に俺は耳を疑った。不死身とはいえ、たった一人の男に軍が奪われた?いったいどうやって。「身分を偽って入隊したやつは、死と復活を繰り返して二階級特進し続けたんです。気��けば軍の誰よりも偉く……」クソゲーのバグかよ。
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暇十朗#140字小説
5 months
タイムマシンで未来にいったら俺がソシャゲの限定レアキャラになっていた。しかも美少女。「同じ最高レアの織田信長と相性がいいから超人気キャラですよ」と子孫から説明を受けるが、恐れ多いわ。そもそもなぜ俺が偉人扱いされている。「なぜって、それを作ったから」ああ、タイムマシンの実用化……。
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暇十朗#140字小説
3 months
「来い!俺の切り札!」変な髪型のガキの引いたカードが金色に光りだしたので、一層気を引き締める。これが噂の『引きたいときに引きたいカードを引く超能力』ってやつか。カードゲームを馬鹿にしやがって、一般人の戦い方を見せてやるよ。俺は手元のカードと袖口に仕込んだカードをそっとすり替える。
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暇十朗#140字小説
5 months
「……待ってください。いま『凶器のゴルフクラブ』と、そう言いましたか。あー……、それはいけない。今回の事件の凶器はまだ警察も特定できていない──つまり犯人しか知り得ない情報なんです。それにもかかわらずなぜ、一介の探偵でしかない私が知っているのか。完全にやらかした。手汗がヤッバい」
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5 months
『不死者は死ねないことが苦痛である』という風潮が世間で強まりつつある。著名な不死者の一人が救済を訴え、社会問題へと発展したのだ。『悲しい存在』『彼らに安らかな死を』最近はそんな風に人から憐れまれることも増えた。私も八百年ほど生きているが、まだ死にたくない。不安だ。善意に殺される。
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2 months
「かつて俺の故郷は敵国に──」 ボロボロの悪党がなにやら悲しげな過去を話し出す雰囲気だったので、俺は待ったをかける。聞いても後味が悪くなるだけだから。どうせなら面白い話をしろ。 「……不倫相手に刺された後、搬送された先が妻の勤める病院だったことがあって」 よさげなの持ってるじゃん。
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5 months
ストーカーも慣れればアレクサみたいなものだ。ガサゴソと部屋を片付けながら、 「なあ、俺って印鑑どこに置いた?」 コンセントに向かって声をかけると、 『あ、私が持ってますよ』 天井から声が降ってくる。なんかスピーカーの音質が良くなってるな。いつの間に仕掛け直し──印鑑お前が持ってるの?
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2 months
「こちら、馬鹿には見えない服です」 正気かこいつ。なぜか得意げな詐欺師に私は呆れる。このような稚拙な嘘で、一国の王を騙すつもりか。 「私がこれを買うとでも?」 「ええ、ええ。聞けば陛下は特殊なご性癖をお持ちだそうで。こちらを着て市街へ繰り出せば、その欲求を満たせるかと」 「値段は?」
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5 months
『これは750万。それは820万ですわ』 資産家自慢の品々が画面に映る中、 「凄いな」 下卑た笑みの老人から目を逸らすと、隣で友人が感嘆の声を漏らしていた。 「お前が見ても?」 彼は某大企業の御曹司。相当裕福なはずだが、意外にもすぐに頷く。 「俺は値段とか見ないからさ。よく覚えているなって」
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暇十朗#140字小説
5 months
的外れなトリックを語った探偵が指を向けたのは、犯人である俺ではなく庭師の男だった。ホッとしたのも束の間、俺はすぐに耳を疑うことになる。なぜか庭師がやってもいない犯行の動機を自供し始めたのだ。犯人は俺なのに──ん?俺だっけ……?戸惑う俺に「よかったですね」と探偵の助手が耳打ちする。
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暇十朗#140字小説
4 months
「私が女か、はたまた男か。君にとってそれは大事なことかい?」 私の問いに彼はしれっと答える。 「別に。人として好きだから」 本当だろうか。こういうとき格好つけるタイプだからなあ。あまり信用ならない。 「女だよ」 ちょっと嬉しそうな顔したな。 「嘘だよ」 それはそれで、みたいな顔したな。
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暇十朗#140字小説
2 years
「幽霊とか怖くないんで。いたらぶん殴ってやりますよ」酔った後輩がそんなことを言い出すので、近隣の心霊トンネルに放置してきた。大回りし、出口で待つこと数十分。中からすごい勢いで走ってくる後輩。よく見れば片頬が腫れている。「カウンター食らいました。なんか格闘技かじってますよ、あいつ」
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3 months
「『豆腐の角に頭をぶつけて死ね』って言葉あるじゃん。俺さ、あれをずっと投げつけるときの決め台詞だと勘違いしてて」 「豆腐を?」 「豆腐を。で、実際に叫びながら投げてみたんだけど」 「叫びながら?」 「叫びながら」 「投げたの?」 「投げた。今は後処理に困ってる」 「豆腐の?」 「死体の」
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7 months
「へえ、捨てるんですね。まだ動くのに。愛着とかないんですか。──バッテリー?替えればいいでしょう。あーあ、私も古くなったらポイッ!ですかね」などとアンドロイドがネチネチうるさいので、俺の古いスマホは現在あいつの部屋にある。さっき確認したら手作りのカバーを着けていた。友情だろうか。
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5 months
子供のときは「ねえねえ、あいつ殺してもいい?」とナイフ片手にはしゃいでいた俺も、今じゃ三十路のおっさんだ。美少年と可愛がられた容姿は怠惰な生活で醜く歪み、持ち味だった俊敏な動きもどこへやら。やむを得ず戦い方は腕力を活かしたものに、ナイフはチキンに、公の場での一人称はオデに変えた。
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暇十朗#140字小説
2 years
意中の彼から突然LINEがきた。 『今夜はとても月が綺麗だね』 これは、どっちだ……?無知なだけか、それとも脈があるのか。彼は夏目漱石を知らない気がする。だけど、もしもそういう意味だとしたら大チャンスだ。難しい顔で唸っていると、またスマホが鳴った。 『By 夏目龍之介』 無知で脈があった。
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暇十朗#140字小説
4 months
「地元が少し特殊で、大家にバレると入居を拒否されちゃうんですよ」サークルの後輩は苦笑するが、そんなのまったく笑えない。出身地で人を差別するなんて、悪しき風習もいいところだ。「じゃあ今は実家から通ってんの?」「はい。若干遠いですけど、米花町から──なんでちょっと距離取ったんですか」
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2 months
自分の容姿を自由に変化させられる能力を得てからというもの、数百回以上は顔を変えてきた。結果として元の顔とか忘れちゃったケド、まあ今のウチの方が絶対カワイイしあんま気にしてない。だけど最近「写メ持ってるよ」と友達に見せてもらった学生んときのウチも鬼カワイくて、ウチやばってなってる。
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4 months
『君は指さす夏の大惨角』 #140 字小説 #140 字ss ※この話は創作です。
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暇十朗#140字小説
1 year
「あなた、彼じゃないでしょ。ドッペルゲンガーってやつ?」私の指摘に、彼と同じ姿をしたナニカはぐにゃりと笑った。「恋人ってのは恐ろしいね。家族でさえ気づけない俺の入れ替わりを、まさか見抜くとは。容姿に差異はないはずだが」 「本物の彼は山奥に埋めたもの」 「本物の彼は山奥に埋めたの?」
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暇十朗#140字小説
4 months
道場で酒を飲んでいたら「師匠!騙しましたね!」と愛弟子が怒鳴りこんできた。「なにが『お前なら今回のトーナメントは余裕だから』ですか!サイボーグに超能力者、鬼の末裔、果てはビーム!僕以外に一般人がいやしない!殺す気ですか!」俺は愛弟子をなだめつつ、とりあえず優勝トロフィーを預かる。
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9 months
「無能なお前の代わりなんていくらでもいるんだ!──見ろ!」 部長が手を叩くと、背後の扉から俺と同じ姿の集団が入ってくる。 「お前の細胞から造られたクローン部隊だ!お前はもう用済みなんだよ!」 「無能を増やしちゃう辺り、部長もかなり無能だと思います」 そうだそうだとクローン部隊が頷く。
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